電験三種の過去問解説(電力):2016年(平成28)問16
地絡事故及び三相短絡事故による電流(計算)
図に示すように、発電機、変圧器と公称電圧66kVで運転される送電線からなる系統があるとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、中性点接地抵抗は図の変圧器のみに設置され、その値は300Ωとする。
(a) A点で100Ωの抵抗を介して一線地絡事故が発生した。このときの地絡電流の値[A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、発電機、発電機と変圧器間、変圧器及び送電線のインピーダンスは無視するものとする。
(1)95 (2)127 (3)165 (4)381 (5)508 (b) A点で三相短絡事故が発生した。このときの三相短絡電流の値[A]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、発電機の容量は10000kV・A、出力電圧6.6kV、三相短絡時のリアクタンスは自己容量ベースで25%、変圧器容量は10000KV・A、変圧比は6.6kV/66kV、リアクタンスは自己容量ベースで10%、66kV送電線のリアクタンスは、10000kV・Aベースで5%とする。なお、発電機と変圧器間のインピーダンスは無視する。また、発電機、変圧器及び送電線の抵抗は無視するものとする
(1)33 (2)219 (3)379 (4)656 (5)3019
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過去問のポイント
一線地絡事故が発生した時の回路を正しく描けること(電圧や抵抗の接続など)や、パーセントインピーダンスの公式が問題を解くポイントです。
今回の問題は計算過程も短く、すぐに解けてしまうので、B問題ではサービス問題となります。
(a)地絡電流
step
1問題の図を描きなおす
A点で100Ωの抵抗を介して一線地絡事故が発生した状態を図にします。
ちなみに、黄色で囲んだ閉回路の相電圧は、
\(E=\displaystyle\frac{66}{\sqrt{3}}\)
\(=38.15[kV]\)
となります。
step
2地絡電流を計算
300Ωと100Ωの抵抗が直列接続された回路の電流を求めるだけなので、簡単ですね。
\(I_g=\displaystyle\frac{E}{300+100}\)
\(=\displaystyle\frac{38.15×10^3}{400}\)
\(=95[A]\)
となり、(1)が正解です。
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(b)三相短絡電流
step
1図にパーセントインピーダンスを描き込む
発電機/変圧器/66kV送電線の容量が10000kV・Aで同じなので、A点から見たパーセントインピーダンスはそのまま足し算することができます。
\(\%Z=25+10+5=40[\%]\)
step
2定格電流の計算
\(I_n=\displaystyle\frac{P}{\sqrt{3}V}\)
\(=\displaystyle\frac{10000×10^3}{\sqrt{3}×66×10^3}\)
\(=87.476[A]\)
step
3三相短絡電流
三相短絡電流は、パーセントインピーダンスの公式から求めることができます。
パーセントインピーダンスの公式
\(\%Z=\displaystyle\frac{I_n}{I_s}×100[\%]\)
\(I_n\):66kV送電線の定格電流
\(I_s\):三相短絡電流
\(I_s=\displaystyle\frac{I_n}{\%Z}×100\)
\(=\displaystyle\frac{87.476}{40}×100\)
\(=219[A]\)
したがって、(2)が正解です。