電験三種の過去問解説(電力):2019年(令和元年)問9
架空送電線路の構成部品(論説)
架空送電線路の構成部品に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1)鋼心アルミより線は、アルミ線を使用することで質量を小さくし、これによる強度の不足を、鋼心を用いることで補ったものである。
(2)電線の微風振動やギャロッピングを抑制するために、電線にダンパを取り付け、振動エネルギーを吸収する方法がとられる。
(3)がいしは、電線と鉄塔などの支持物との間を絶縁するために使用する。雷撃などの異常電圧による絶縁破壊は、がいし内部で起こるように設計されている。
(4)送電線やがいしを雷撃などの異常電圧から保護するための設備に架空地線がある。架空地線には、光ファイバを内蔵し電力用通信線として使用されるものもある。
(5)架空送電線におけるねん架とは、送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので、ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替えることができる。
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過去問の解説
問題自体は簡単でしたが、架空送電線路の構成については出題箇所が多いので、今回問われていないけど覚えるべきところがたくさんあります。
問題を解くポイント
- 鋼心アルミより線とは(1)
- ダンパとは(2)
- がいしとは(3)
- 架空地線とは(4)
- ねん架とは(5)
鋼心アルミより線とは
鋼心アルミより線
アルミ線を使用することで質量を小さくし、これによる強度不足を鋼心で補ったもの
<特徴>
・硬アルミ線をより合わせている(*軟アルミ線ではありません)
・硬銅線よりも導電率が小さい
・硬銅線よりも機械的強度が大きくて軽量
・同一抵抗の硬銅線と比べて電線の外径が大きい
➡コロナ臨界電圧が高い
➡高電圧送電線用として多く用いられる
したがって、(1)の記述は正しいです。
ダンパとは
ダンパ
振動エネルギーを吸収し、電線の微風振動やギャロッピングを抑制する
<種類>
・ストックブリッジダンパ
➡微風振動による上下運動が最大になる箇所に取り付けて、振動を抑制し、金属疲労と騒音の発生を抑制する
・トーショナルダンパ
➡電線の上下振動をねじり振動に変えて振動エネルギーを吸収する
したがって、(2)の記述は正しいです。
今回は問われていませんが、電線が振動する原因についても、おさらいしておきましょう。
電線の振動原因
・微風振動
➡電線に直角に比較的ゆるやかで一様な風が当たるとカルマン渦が生じ、電線を上下させる力による周波数と電線の固有振動数の一致で振動が起きる
➡軽量の電線に起きやすい
➡径間が長く電線の張力が大きいほど起きやすい
・ギャロッピング
➡送電線に雪や氷が付着した状態で強風を受けると上下に激しく振動が起きる
がいしとは
がいし
電線と鉄塔などの支持物との間を絶縁する
雷撃などの異常電圧による絶縁破壊は、がいし表面で起こるように設計されている
したがって、(3)の記述は誤りです。
架空地線とは
架空地線
送電線やがいしを雷撃などの異常電圧から保護するための設備
架空地線には、光ファイバを内蔵し電力用通信線として使用されるものもある
したがって、(4)の記述は正しいです。
ねん架とは
ねん架
架空送電線において、送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので、ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替えることができる
<効果>
・電圧と電流を平衡させて送電線路の中性点に現れる残留電圧を減少させ、付近の通信線に対する誘導障害を軽減させる
したがって、(5)の記述は正しいです。